空気がすんでいるところは星が綺麗だと聞いた。
ぶっちゃけ私はこの星空しか知らないからここらで星が綺麗に見れるという事実にピンと来ない。
というかせっかく空眺めてるんだから流れ星の一つでも流れてこないかな。
キラキラの星空は十分なものなのだろうけど、少し物足りない。
もしも今、流れ星を見れたらどんな願い事をしてやろうか。
別に信じちゃいないけど、たまには信じてみたくなる。
ふるり。
開け放った窓から吹き込む冷たい空気に身体が震える。
真冬の午前2時はさすがに寒い。
星を見るのもまあ飽きたし窓締めよう。寝る前にタイマーをかけておいたエアコンはもう止まってる。月明かりだけを頼りにエアコンのリモコンを掴んで起動させる。
室内に流れ込むあったかい空気にほっと小さく息をつく。
窓から離れてベッドに身を投げる。
眠気どっかいっちゃった。てか今日は全然眠気が来ない。
「 」
声が聞きたい。
ほぼ無意識に呼んだ人の名前はかえって私の意識を覚めさせていく。
遠い地に夢を追って旅立っていった友人のひとり。
いつも一緒にゲームしてても隣でバカみたいに大声で笑ってた。
ついてけないなんていっつも言ってたけど、言えない時もあった。
好きなことを語るときだけは目キラキラさせて、いくつになっても子供みたいで。
長々と語って来ても何も言えなかった。
夢を追って、東京に行くといわれたときも、そうかとしか言えなかった。
いつでも愚痴聞いてあげるよ、泣いて帰ってくるなよ。なんて馬鹿にしてやった。
でも、そんなことなかった。今も東京で、頑張ってる。
その上イラストレーターなんてものをはじめて、さらに自分を多忙にしてる。
その始めた理由すらやっぱりあの子らしくて、聞いたときには笑ってしまった。
しかもそれに自分ともうひとり友人が巻き込まれるとは。
この年になってもまだ、一緒にバカできるのがうれしい、なんて。
もう寝れなそうだからずっと起きてるか。
身体を起こせばカーテンを閉め忘れた窓からキラキラ星の光が届く。
東京は、こんなには星が見えないのだろうか。
きっとむこうじゃこんな綺麗な星空見れてないんだな。
東京なんて行くからだ、ざまーみろ。
なんて思うけど、同時に頑張れと思ってしまう。
好き放題やって、そのままでいろと思ってしまう。
どうか振り返らずに進んで、なんて。
辛くなって帰ってきた時には散々馬鹿にしながら、それでも傍に居てやりたい。
ベッドに放置してた携帯が鳴り響いてまた意識を戻される。
ディスプレイを確認すれば、ちょうど考えていた人からの着信。非常識な時間にかけてくるなよと思うよりも電話が嬉しいなんて。
私は完全に毒されている。
情けないよなあ。友人に、それも女に、気付いたときには恋をしていた。
「こんな時間になーに」
「あ、零起きてた?」
小さくごめんと謝ってそんなことを聞いてくるふうな。
「寝れなくて起きてた」
「そっか。じゃあちょっと話そうよ」
私の言葉に心なしか電話越しでテンションが上がったように思う。
でもこの子が、電話してくるのはきっと。
「何があったんだよ」
どうせ何かに詰まったとき。
「さっすが零。わかってるなぁ」
ひゅって息を呑む音が聞こえたと思ったら、いつもみたいなおちゃらけた声。
でもすぐ終わって、真面目なトーンで話し出す。
あっちでいき詰ってること。
周りの人のアドバイスを理解は出来るけど受け入れきれないこと。
絵の詳しいことなんて私にはわからない。それがわかってるから私に言ってくる。
余計なアドバイスなんてしてこないことを知ってるから。
ポツリポツリと述べる言葉に軽い相槌しか打てなくて。
「好きなだけ悩んで、好きに決めな」
好きにやるだけやって、いっぱい凹んできなよ。
自分の足で好きに進めよ。その分だけ確かなものがあんたにはついてくるだろうから。
口に出して言ってやることなんて出来ないけれど、私が誰よりも信じてるから。
「うわぁ…冷てぇな零ちゃんはよぉ!」
「うるせぇな深夜に電話付き合ってるだけでもありがたく思いやがれ」
「ひでぇよー恋人が弱音吐いたら優しく慰めてくれるもんじゃないのぉ?」
「はぁ?気持ちわるいこと言ってると叩くぞ」
こえええ、なんて電話越しに言ってくるけど普通だったらこんな時間に電話でねえしつまんない話なんて聞かねえもん。
その時点で大概甘いことに気づきなよ。
そう、まさかこいつと恋人関係になれるとは。というかなってしまうとは。
ああ、そうだ。
「なー」
「ん?」
「そっちってさ、星綺麗に見える?」
座っていたベッドから立ち上がり、窓の外の星空を見ながら問う。
電話越しに星ぃ?と間抜けな声が聞こえた。
「見える、けどまあ千葉ほどではないよ」
「ふーん」
「聞いといてそれかよ!」
東京でも星はキラキラしてるらしい。
「ていうか零。こんな時間まで起きてるとか身体に良くないでしょ」
「それはふーちゃんもだろうがさっさと寝ろや!」
「はーいはい。寝ます、寝ますよ」
私の暴言なんて慣れたもの。あっさりと笑いながら受け流される。
「おー、おやすみ」
「ん、おやすみ」
通話を切って、また携帯はベッドに。
ああ女々しい。声を聞いたらやっぱり会いたくなる。
会いたい、なんて私から言えない。
そりゃ恥ずかしいからってのもあるけど、やっぱり応援したいから。
いつまでも夢を追いかけて進み続けるのを応援したいと思っているから。
次はいつ東京に行くだろうか。
いつ、会えるだろうか。
二度と会えないわけじゃないから、だから寂しい思いは絶対に見せない。
夢を追うあの子と見守るだけの私にも同じようにキラキラの星が見えてる。
ちくしょう。
距離なんて関係なくずっとあの子を見守れる星が羨ましい、なんて。
東京に行くあの子を、唇噛んで涙をこらえて見送ったことを思い出した。
どこにいたって繋がってるから。
カッコつけて、私にそう言ってきたことも一緒に思い出されて、思わず笑ってしまった。
また星を見上げてみる。
キラキラキラキラ。夜空を覆って輝く中を一際キラリと光る流れ星。
お、電話する前に思ってた通りに流れ星が。私すごいかも。
結局願い事なんて、思いつくのはやっぱりあの子のこと。
健康に、頑張り続けられますように。
三回も繰り返せなかったけど、この私が祈ったんだ。
しっかり叶えてよね。
あの子にももし流れ星が見えていたら、
いったい何を祈るだろうか。
また不意にベッドの携帯がなる。今度はメールの着信音。
送信者はもちろんさっきまでの電話相手で。
『月が綺麗ですね』
カッコつけやがってこの。
たしかにキラキラの星の中で一際輝く月も綺麗だ。
「死んでもいいわ」
月を見上げながら、呟いた言葉をメールに乗せて返す。
次は直接言ってこいよなヘタレ野郎め。
月も星も、どうかあいつが無茶しないように見守っててくれよう。なんてな。
ぶっちゃけ私はこの星空しか知らないからここらで星が綺麗に見れるという事実にピンと来ない。
というかせっかく空眺めてるんだから流れ星の一つでも流れてこないかな。
キラキラの星空は十分なものなのだろうけど、少し物足りない。
もしも今、流れ星を見れたらどんな願い事をしてやろうか。
別に信じちゃいないけど、たまには信じてみたくなる。
ふるり。
開け放った窓から吹き込む冷たい空気に身体が震える。
真冬の午前2時はさすがに寒い。
星を見るのもまあ飽きたし窓締めよう。寝る前にタイマーをかけておいたエアコンはもう止まってる。月明かりだけを頼りにエアコンのリモコンを掴んで起動させる。
室内に流れ込むあったかい空気にほっと小さく息をつく。
窓から離れてベッドに身を投げる。
眠気どっかいっちゃった。てか今日は全然眠気が来ない。
「 」
声が聞きたい。
ほぼ無意識に呼んだ人の名前はかえって私の意識を覚めさせていく。
遠い地に夢を追って旅立っていった友人のひとり。
いつも一緒にゲームしてても隣でバカみたいに大声で笑ってた。
ついてけないなんていっつも言ってたけど、言えない時もあった。
好きなことを語るときだけは目キラキラさせて、いくつになっても子供みたいで。
長々と語って来ても何も言えなかった。
夢を追って、東京に行くといわれたときも、そうかとしか言えなかった。
いつでも愚痴聞いてあげるよ、泣いて帰ってくるなよ。なんて馬鹿にしてやった。
でも、そんなことなかった。今も東京で、頑張ってる。
その上イラストレーターなんてものをはじめて、さらに自分を多忙にしてる。
その始めた理由すらやっぱりあの子らしくて、聞いたときには笑ってしまった。
しかもそれに自分ともうひとり友人が巻き込まれるとは。
この年になってもまだ、一緒にバカできるのがうれしい、なんて。
もう寝れなそうだからずっと起きてるか。
身体を起こせばカーテンを閉め忘れた窓からキラキラ星の光が届く。
東京は、こんなには星が見えないのだろうか。
きっとむこうじゃこんな綺麗な星空見れてないんだな。
東京なんて行くからだ、ざまーみろ。
なんて思うけど、同時に頑張れと思ってしまう。
好き放題やって、そのままでいろと思ってしまう。
どうか振り返らずに進んで、なんて。
辛くなって帰ってきた時には散々馬鹿にしながら、それでも傍に居てやりたい。
ベッドに放置してた携帯が鳴り響いてまた意識を戻される。
ディスプレイを確認すれば、ちょうど考えていた人からの着信。非常識な時間にかけてくるなよと思うよりも電話が嬉しいなんて。
私は完全に毒されている。
情けないよなあ。友人に、それも女に、気付いたときには恋をしていた。
「こんな時間になーに」
「あ、零起きてた?」
小さくごめんと謝ってそんなことを聞いてくるふうな。
「寝れなくて起きてた」
「そっか。じゃあちょっと話そうよ」
私の言葉に心なしか電話越しでテンションが上がったように思う。
でもこの子が、電話してくるのはきっと。
「何があったんだよ」
どうせ何かに詰まったとき。
「さっすが零。わかってるなぁ」
ひゅって息を呑む音が聞こえたと思ったら、いつもみたいなおちゃらけた声。
でもすぐ終わって、真面目なトーンで話し出す。
あっちでいき詰ってること。
周りの人のアドバイスを理解は出来るけど受け入れきれないこと。
絵の詳しいことなんて私にはわからない。それがわかってるから私に言ってくる。
余計なアドバイスなんてしてこないことを知ってるから。
ポツリポツリと述べる言葉に軽い相槌しか打てなくて。
「好きなだけ悩んで、好きに決めな」
好きにやるだけやって、いっぱい凹んできなよ。
自分の足で好きに進めよ。その分だけ確かなものがあんたにはついてくるだろうから。
口に出して言ってやることなんて出来ないけれど、私が誰よりも信じてるから。
「うわぁ…冷てぇな零ちゃんはよぉ!」
「うるせぇな深夜に電話付き合ってるだけでもありがたく思いやがれ」
「ひでぇよー恋人が弱音吐いたら優しく慰めてくれるもんじゃないのぉ?」
「はぁ?気持ちわるいこと言ってると叩くぞ」
こえええ、なんて電話越しに言ってくるけど普通だったらこんな時間に電話でねえしつまんない話なんて聞かねえもん。
その時点で大概甘いことに気づきなよ。
そう、まさかこいつと恋人関係になれるとは。というかなってしまうとは。
ああ、そうだ。
「なー」
「ん?」
「そっちってさ、星綺麗に見える?」
座っていたベッドから立ち上がり、窓の外の星空を見ながら問う。
電話越しに星ぃ?と間抜けな声が聞こえた。
「見える、けどまあ千葉ほどではないよ」
「ふーん」
「聞いといてそれかよ!」
東京でも星はキラキラしてるらしい。
「ていうか零。こんな時間まで起きてるとか身体に良くないでしょ」
「それはふーちゃんもだろうがさっさと寝ろや!」
「はーいはい。寝ます、寝ますよ」
私の暴言なんて慣れたもの。あっさりと笑いながら受け流される。
「おー、おやすみ」
「ん、おやすみ」
通話を切って、また携帯はベッドに。
ああ女々しい。声を聞いたらやっぱり会いたくなる。
会いたい、なんて私から言えない。
そりゃ恥ずかしいからってのもあるけど、やっぱり応援したいから。
いつまでも夢を追いかけて進み続けるのを応援したいと思っているから。
次はいつ東京に行くだろうか。
いつ、会えるだろうか。
二度と会えないわけじゃないから、だから寂しい思いは絶対に見せない。
夢を追うあの子と見守るだけの私にも同じようにキラキラの星が見えてる。
ちくしょう。
距離なんて関係なくずっとあの子を見守れる星が羨ましい、なんて。
東京に行くあの子を、唇噛んで涙をこらえて見送ったことを思い出した。
どこにいたって繋がってるから。
カッコつけて、私にそう言ってきたことも一緒に思い出されて、思わず笑ってしまった。
また星を見上げてみる。
キラキラキラキラ。夜空を覆って輝く中を一際キラリと光る流れ星。
お、電話する前に思ってた通りに流れ星が。私すごいかも。
結局願い事なんて、思いつくのはやっぱりあの子のこと。
健康に、頑張り続けられますように。
三回も繰り返せなかったけど、この私が祈ったんだ。
しっかり叶えてよね。
あの子にももし流れ星が見えていたら、
いったい何を祈るだろうか。
また不意にベッドの携帯がなる。今度はメールの着信音。
送信者はもちろんさっきまでの電話相手で。
『月が綺麗ですね』
カッコつけやがってこの。
たしかにキラキラの星の中で一際輝く月も綺麗だ。
「死んでもいいわ」
月を見上げながら、呟いた言葉をメールに乗せて返す。
次は直接言ってこいよなヘタレ野郎め。
月も星も、どうかあいつが無茶しないように見守っててくれよう。なんてな。
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