503 不眠

おい!!!スカート?!!!飯テロさん??!!!!

504 物理

ふざけんなふざけんなふざけんな、絶対渡さない!!!!!

505 ななしのカオス

返事しろ!!!!!

506 ななしのカオス

ちょっと待て………なんで飯テロだけなんだ?

507 ななしのカオス

>>506 え?

508 ななしのカオス

なんでスカートは狙われない?…まさか飯テロだけなんてことはないよな…?

509 ななしのカオス

>>508

510 ななしのカオス

>>508

511 ななしのカオス

>>508

512 ななしのカオス

>>508

513 ななしのカオス






【早急に】見知らぬ屋敷なう【帰りたい】












581 ななしのカオス

保守

……二時間経ったな

582 ななしのカオス

保守

戻ってこない……
もしかして、考えたくないけど、まさか………

583 ななしのカオス

保守

>>582 縁起でもねえこと言うな!!

584 ななしの調査班

例の悪霊のコトとか、禍ツ神のコトとかは、どんだけ調べても物理が言ってた以上のことは分からんかった……力不足ですまん。

コテハン組は?

585 ななしのカオス

>>584 おかー
お前は頑張ったよ。

コテハン組は今ROMってるぞ。

586 ななしの調査班

そっか…

587 ななしのカオス

保守

……無事だといいんだけどなぁ………


________________________________________
________________________________________



ふうなは困惑していた。


お泊りで、やっと皆と直接会えたかと思えば、何故か怪奇現象に巻き込まれ。

ともに巻き込まれ、しばらくの間行動をともにしていた人々とは分断され。

そこに、追い打ちのようにこの怪奇現象の元凶たる悪霊が現れて。

正直なところ、ファンタジーも真っ青な衝撃展開の数々に、キャパオーバー寸前だった。
それでもなんとか自分を保っていられたのは、皆━━━━━━大切な人をなんとかして守ろうという、そんな思いがあったからだった。

しかし、いかにめるさんと言えど、悪霊に対抗する術は持っていない。こういうことに巻き込まれたのも初めてだと言っていためるさんも対処の仕様がないだろう。

もちろんふうな自身、幽霊への対抗手段など持っていなかった。そもそも、こういうことに巻き込まれるまで、幽霊の存在を信じてすらいなかった。
けれど、大事な人のために命を懸けないではいられなかった。
ただのサイトで知り合っただけの関係だった。
なのにいつの間にやら、自分の中でめるさんや皆は掛け替えのない存在にまでなっていた。愛しくて愛しくて、たまらなくなっていた。こんなの俺の柄じゃないと思いながら、皆に向けて、何度となく愛の言葉を繰り返した。
なぜだか、そうしないといけない気がした。


目の前に何やら黒い瘴気のようなモノを纏った女が現れたとき、ふうなはめるを隠すように立ち塞がりながら、死すら覚悟した。

大切な人を守るためなら、命など惜しくはないと思いながら。










だからこそ、この状況についていけない。


緑の自慢の髪が、さらり揺らめく。

その手には、先ほどまで無かったはずの、弓。
番えるための矢は、ない。


つい数十分前まで共にいた、霧咲を思い出す。彼も矢を持たず、弓だけを持っていた。
もしかしてこれ、霧咲と同じなのではないだろうか。そう思った。




『 ジゃ ま、 スる ナ 』


あたりから響く呻き声に混じって、目の前の悪霊女から、ノイズ混じりの不快な声が放たれる。その言葉は途切れ途切れで聞き取り辛く、ふうなは意味を理解するのにかなり時間を要した。

ジャマ、邪魔。なんの邪魔だ。むしろ邪魔なのはお前たちだ。折角のお泊り台無しにしやがって、と心中で毒づくと、めるがふふっと笑うのが聞こえた。

「………なんで笑ってんですか。」
「、ごめんなさい。でも、可笑しくて。だって━━━━━邪魔をしたのはこいつらの方なのに。」

見惚れるほど綺麗に微笑んでいためるは、最後の一文でスッと目を細めた。そして、一歩、踏み出す。


「邪魔?私達が?戯言は程々にして。」
「禁忌を犯し、穢れた神を呼び寄せたのは誰。」
「愛し合っていた彼らを、分かたったのは誰。」
「私の愛した男を、殺したのは誰だ。」



めるは、淡々とした口調で、けれど抑えきれない怒りを滲ませながら、一歩、また一歩、女に近づいていく。

さっきの言葉、それが何を意味するのかも、そもそもめるの言葉の意味すらも、ふうなにはわからなかったが、よっぽど怒っているのだろう。それだけは理解出来た。

悪霊女はまだ何かわめいているようだったが、今度はもう、聞き取ることすら出来なかった。


「悪いけれど、そろそろ耳障り。━━━━ご退場願うわ。」

冷たく告げためるが、ふうなから借りた矢を持たないまま弓をつがえた。
手元から、燦然と光り輝く、矢の形をしたナニカが現れる。

めるは、その切っ先を、目の前の悪霊に向けて━━━━━━




閃光に思わず目を瞑った。









零は苛立っていた。

(クソッ、クソッ、クソッ!!何やってんの私は?!)

遠い遠い昔のあの日々。暖かく長閑で、けれど命を懸けて戦い続けた日々。あの頃ならば、こんな失態は犯さなかっただろう。
今の、平和でどこか間の抜けたような毎日の中で、なまったか。

なんにせよ、一応のために彼らの周りに張っていた結界に干渉された上、挙句に分断されるというこの体たらく。あまりの歯痒さに、ギリッ、と拳を握り締める。

どこまでも続くような襖を、次々に開け放っていく。二十畳はあろう部屋は、四方を襖に囲まれていて、どの方向を開いても、全て同じ部屋だった。
襖をいくら開けても、何処にも辿り着かない。開けたら開けた分だけ、鏡合わせのように同じ光景が続く。

さらには、浄化しても浄化しても、湧いて出てくる悪霊ども。

零は、苛立っていた。

「零」

後ろから、もなかが呼びかけてきた。けれど走り続ける足を止めることなく、零は前を向いたまま答えた。

「なんだよ。」
「……少し、冷静になった方がいい。今のままじゃ、これを延々と繰り返すことになるよ。」

疲れているはずなのに、全力で走っている自分にもなかが追いつけていることをやっと疑問に思いつつ、その言葉に、零は立ち止まった。

「…………どういう意味」

睨み付けつつ問い掛けると、もなかが笑った。

「この空間、多分歪んでるんでしょ?先が見えなさすぎる。キリがない。向かい合わせになった鏡の中の世界が永遠に続いているように、この空間も何処までも続いてるんだよ。
……それで、そういう空間から抜け出すためには、どうしたらいいか。零にもわかるはずだろ?」

もなかの言葉に、ようやく焦りと怒りと苛立ちで、思考の狭まっていた自分に気付いた。

「……っあー、そうだったな………」

不覚にも、もなかの言葉で頭が冷えた。そして、まったく使えない頭脳が、ようやくのこと回り始める。

そして、はたと動きを止めた。

目の前のもなかを見る。不思議そうに首を傾げたもなかは、目を見開いて固まったままの零の顔を覗き込んできた。

「……なんで」
「うん?」
「………なんでそんなこと、お前がわかるんだ……?」

このとき、ようやく零は思い至ったことがある。

木吉は、この空間に来たときから、一人異様なまでに落ち着いていた。慌てるふうなを宥めたり、冷静に意見したり。あまりにいつも通りすぎた。

(流石。………なんて思って流してたけど、それ、おかしくないか……?)

まるで、こういうことに慣れているかのような………。

頭に浮かんだ考えに、零は頭(かぶり)を振った。だって、そんなまさか。ありえない。





なのに。

なのに、目の前のもなかは、嬉しそうに、笑う。








「だって、お前が教えてくれたんじゃない。」



ねえ、私の愛しい炎巫女。









かつてと変わらぬ優しい声で、愛していた彼女が囁いた。




























調椛は、幼い頃から、毎日夢を見続けていた。



物心付いた頃から見始めた夢は、驚くほど鮮明なうえリアルだった。あまりにリアル過ぎて、目が覚めると暫く、そこが現実なのか夢の中なのか、わからなくなることが何度もあった。

現実の自分は中学生だというのに、夢の中の自分は高校生くらいで、いつも巫女装束を纏っていた。
年は明らかに違ったが、夢の中の女と現実の自分との性格は一致していた。その上顔立ちもよく似ていた。だから調椛は、その夢の中の自分を「もう一人の俺」と呼んだ。

現実では、至って平和な、見ようによっては退屈な生活を送っていた調椛だが、夢の中の「もう一人の俺」は、まさしく波瀾万丈の人生だった。











家族を戦で亡くした夢の中の自分━━━━ここでは女としよう━━━━は、神社で巫女として育てられた。明るい性格の少女は、年の近い姉巫女たちに可愛がられ、たくさんの友人にも囲まれ、平和に温かい日々を過ごしていた。

けれど、巫女として修行を続けるうちに、ひょんなことで、少女の生まれ持った"チカラ"が明らかになると、それまでの生活からガラリと一変した。
素晴らしい才能の持ち主だと、同じように特別な"チカラ"を持っていたために集められた、四人の巫女たちと共に、やんややんやともてはやされるようになった。これは凄いこと、素晴らしいことなのだと教えられて、誇らしく思えたのは最初のうちだけ。

優しい日々は、終わってしまった。

可愛がってくれていた姉巫女たちや、仲良く遊んだ同い年の巫女たちが、女たち五人を嫉妬を孕んだ瞳で見てくる。
薄汚い欲望を持って、私利私欲のために、自分たちに近づこうという輩が現れる。


例外は、いた。

姉巫女たちの中にも何人かは、以前と変わらぬ態度で接してくれる者もいた。
本当に善意で、彼女と仲良くしてくれる人もいた。

その人たちには救われたけど、ごく稀なことで。その上、彼女たちはその才能故により厳しい修行をさせられ、誰かと会うような時間がなくなっていった。
そんな環境は、五人の、他人に対する不信感を育てるには十分なものだった。







厳しい修行を乗り越え、史上最も素晴らしい才を持って生まれた巫女として名を馳せた五人は、最奥の国の領主に仕えていた。
最奥の国の領主はとてもいい人だった。まるで、彼女たちを家族同然に扱ってくれた。
最初のうちは警戒していた彼女たちも、優しくされるうちに次第に心を開き、領主を兄のように、父のように慕った。

そんなある日、偉い人が来る、と言われた。
北の国、南の国、東の国、西の国、それぞれの領主たちだという。

最奥の国の領主は、その四人はとてもいい奴だと言っていた。
けれど、少女たちはそれを素直に信じることは出来なかった。家族同然に慕っている自分たちの主の言葉だ。信じたかったけれど、いい人の顔をして、その腹の中は正反対な人間を、嫌という程見てきたのだ。

そう、信じられなかった。

例え、婚約が決まっていても。



それは、



そんな少女を不器用な手のひらが頭を撫でた。
出来て当然だと周りの大人が言うことを、褒めてくれた。
いろんなものを見せてくれた。
照れ臭そうに微笑んでくれた。
あなたは美しいと言ってくれた。
ぶっきらぼうに、愛の言葉を囁いた。
その横顔は赤く染まっていた。
赤髪の彼女に出会って、少女は恋の優しさを先に知ってしまったからだ。



それを知られないよう、知られないよう、大事に隠してきたその気持ちを、感情を、知っているのはきっと、


自分と彼女だけなのだろう。





調椛にとって、それはあくまで夢の中の出来事。とはいえ、リアル過ぎる上毎日見せられ続けたその夢に、感情移入してしまわないはずがない。

夢の中で、少女がその赤い髪の巫女と会えた日は、調椛も機嫌が良くなり、会えなかった日は落ち込んだ。

とはいえ婚約している男(因みにかなりの美男子である)はきっと本気で彼女の事を愛してくれているのに、
もう一人の自分はなぜあの赤い巫女を好いてしまったのだろうか。
仕方のないことだったろうか。

それでも彼女は表面上男と着実に仲を深め、調椛が中学三年の冬には少女はその男の元に嫁入りして、少女と男は夫婦になった。
そして同じ頃、他の四人の巫女も、それぞれの相手の元に嫁いで行った。

とても、幸せそうに見えた。








なのに。

中学を卒業したその夜。









愛した男が、死んだ。




禍ツ神が現れた、なんとかして欲しい。

一週間前、とある金持ちの地主からそんな依頼を受け、久々に、天才と呼ばれた五人の巫女が集まって。

七日七晚かけて、禍ツ神を封じて。
今にも倒れ込みそうになるのを堪えて、仮にも愛する夫の待つ家へ。



(けど、帰り着いた屋敷の中で、愛する人の体は、ひどく冷たくなっていました。)



夫だけでなく、家人たちもみな息絶えていた。


何を叫んだか知れない。
冷たく、ボロボロになったその人を抱き締めて、ただひたすらに、泣いて、泣いて。
疲れ果てた体で、すっかり軽くなった夫の体を抱きかかえて。(何でかるくなっていたかなんて、考えたくもなかった)
ふらり、ふらり、森の奥へ。


そこで、夫を埋めた。


最後の力を使って赤い巫女に思いを伝え、死のうと彼女は思った。
けれど時は遅く、彼女は湖のそこで泡になった。

そして全ての希望は消え失せ絶望した海の巫女は、自分は、その場で飢え死にしたのだ。











そのあと目を覚ますと、両親と弟が、心配そうな顔をして自分を覗きこんでいた。

酷く魘されていたのだという。一緒の部屋で、二段ベッドの上側で寝ていた弟がいるのはわかるが、違う部屋で寝ていたはずの両親までいるのはなぜだか。
何か言っていなかったかと聞くと、獣のように啼き叫んでいた、と言われた。

ゆっくり、ゆっくりと状況を飲み込んで、それから目の前の家族にすがりついて、泣いた。
夢の中で一生分の涙を使い切ったというのに、現実でも泣いた。

きっとこれから先、こんなに泣くことはないだろうなと思うほどに。




それからしばらくは、食事が殆んど喉を通らなかった。
食べなければ死んでしまうから、最低限は無理やり胃の中に詰め入れたけど、大体は吐いてしまって。食事を作ってくれた母に申し訳なく思った。

家族は、卒業したのが余程に悲しかったのだろうと思っていたようだった。んなわけない。殆どは、愛した人を亡くした喪失感のせいだった。


あれ以来、毎日必ず見ていた夢は、サッパリ見なくなった。

しんでしまったのだろうな、と思った。











調椛は、その夢を忘れようとした。
けれど。

去年の夏、初めて皆と会ったとき。



覚悟と共に踏み入った喫茶店。そこには、忘れようにも忘れられない、あの赤色が在って。

そこには、亡くしてしまっははずの、あの色が在って。



喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら。

その時の自分の中では圧倒的に喜びの方が勝っていたので、取り敢えずのところ諸手を挙げて喜んだのだが。
正確には嬉しさのあまり中に飛び込んで、どうぞ宜しくお願いしますと小声で叫んで、笑われてしまったわけだか。


とにかく嬉しかった。

俺だけの夢だったんじゃなかったのか。
本当に、会えるなんて。

当然、巫女――――零は俺を覚えていなかった。

夢の中と同じように皆で過ごせる保証もなかった。

けれどそれでもいい。


皆が生きて、此処に居てくれるのならば。


なんだっていいと、思った。











さて、調椛は、自分がずっと見てきた夢を、あくまでただの夢だと思っていた。
どれだけリアルだろうと、どれだけ感情移入してしまおうと、あくまで夢なのだと思っていた。

例え、夢の中で見たような顔を、オフ会で見かけたって。

夢だと、思っていた。



だというのに。
この異空間に飲み込まれ、夢の中と同じように、刀を振るう零と、矢を放つ霧咲。

その姿に、まさか、と。

あれは夢ではなかったのか、と思った。


何より、零がスレッドに書き込んだ"昔話"。あれはほとんど、調椛の夢と同じ内容だった。

調椛以外が知るはずのない、ただの夢の。
その、はずの。











そして今、調椛はとうとう確信する。
自分の見ていた夢が、単なる夢ではなく、前世の自分の記憶なのだと。


手に握ったあの感触を、確かめる。

大丈夫。
大丈夫。

「━━━━━━いける。」



目を開けると、驚いた零の顔が見えた。
まあ、一般人だと思ってた友達が、いきなりどこからともなく薙刀取り出したら、そりゃびっくりもしますよねー、っと。

「大丈夫。」



安心させるように薄く微笑んでから、目の前の悪霊を、本当に愛していた人を殺した敵を、見据えた。













今度は絶対に、守って見せる。






さいあは、覚悟を決めた。

「……霧ちゃん。話してもらえない。」

どうやら敵が本格的に自分たちを殺そうとしているのだという。
くろちゃんねるにすら通じなくなり、ただのハコとなった携帯をポケットに押し込める霧咲を見つめ、そう言った。すると霧咲はこちらを見て、困ったような顔をする。
さいあは、構わず話しを続けた。

「スレッドの中で、土佐弁さんが言っていた。本当に、これは単なる偶然なのかと。
私たち7人が選ばれ、引き摺り込まれたのは、そんな一言で片付けていいことなのかと。
零ちゃんは偶然だと言っていたけど、私にはそうは思えない。多分、土佐弁さんも同じように思っただろうね。零ちゃんは話す気がなさそうだったから、諦めたのか別の話題に変えていたけど。」

そこまで言って、霧咲の様子を伺う。

霧咲は、笑った。

「…………あー、うん。そうだよね。ここまで来たら、話しとかないとね、ちゃんと。」

でも、時間がないから、あんまり詳しくは話せないぞ、と言って、霧咲は一度俯いた。
目を閉じて、握り締めた手を胸に当て、何やら覚悟を決めるような顔をした。
再び目を開いたときは、それまでわずかに浮かんでいた迷いの表情はどこにもなかった。











お察しの通り、お泊りメンバーの私たち7人が選ばれ、引き摺り込まれたのは、偶然じゃない。

五人の巫女。それは、紛れもなく私や零ちゃんたち一部のこと。正しくは、私たちの前世のこと。
さいあちゃんはもうしわけないけど、巻き込まれ体質だからだと思う。

炎の巫女は、零ちゃんのこと。

海の巫女は、調椛さんのこと。

大地の巫女は、私のこと。

緑の巫女は、ふうちゃんのこと。

空の巫女っていうのは、もなかさん。

皆幸せだったよ。もちろん私も。

けどあの日、全てが壊れた。


依頼を受けて、助けるために禍ツ神を必死の思いで封じたのに、その禍ツ神を呼び出したのは依頼した当人たちで、しかも目的は、私たちの夫を殺すことだった。
領主も、それに仕えた人たちも、そんじょそこらの武人には劣らないぐらい腕が立った。けれど、多勢に無勢と言うだろう。家人たちも全員殺されたし、いざ眠りにつこうと油断していたところを、何十人もで寄ってたかって痛めつけられたんだろうな。寝巻きを纏った私の夫は、あちこち殴られ、切られ、刺されて、ひどい有り様だった。


暫く何もできなかったなあ……。

でも、唐突に、他の四人の巫女のことを思い出したんだ。皆は無事なのかって。
そうして連絡を取ろうとした。

けれど、その時すでにふうちゃんは夫の後を追って自害していた。

零ちゃんともなかさんと調椛さんは、生きていた。
けれど調椛さんは、命はあっても心が壊れてしまっていた。こちらが何を話しかけても反応せず、食事も睡眠も取らずに、もういない夫へひたすら語りかけていた。気がついたら調椛さんは夫の亡骸とともに何処かへ消えてしまって。
元々禍ツ神の封印で、疲れ切っていたところだったんだ。あっという間に衰弱して、しんでしまった。……辛かったよ。

それから、私と二人で、犯人を全員探し出した。
地主親子も、地主親子に金で雇われ、夫や家人を殺した男たちも。

見つけ出して、呪い殺して。そうしてすべてが終わったあと私は小刀で首を掻っ切って自殺。
二人は幼い頃、皆で共に遊んだ湖に身を投げた。




そのことを思い出したのは、×年前。
私と零ちゃんが、同じ怪奇現象に巻き込まれてさ。
当時はまだイラログとかのこと知らなかったから、お互い本当に初対面だった。二人とも、そんな現象に巻き込まれたのは初めてで。初対面とか言ってる暇もなく協力して、逃げて、………でも、死にかけて。

その時に、全部思い出したんだ。
何もかも、全部。

おかげさまでチカラの使い方も思い出して、私たちは無事元凶を倒し、脱出出来たわけだけど。
当時は、前世の記憶のせいで魘されたり、吐いたりしたもんだよ。色々辛かった。今じゃ割り切ってるけど、愛した人が死んだときの記憶ってのは、本当に、辛くて。



皆に初めて会ったとき、私たち二人とも本気で吃驚したよ。
超絶的な無自覚ホイホイ六人と、一応自覚はあるけどやっぱりとんでもないホイホイ一人が一箇所に集まるうえ、肝試しも場所が場所じゃん?嫌な予感しかしなかったのよね。

山に来てすぐ確認したら、私たちが成した封印はちゃんとされていたから、一応は安心できたんだけど………まさか君達がやらかしてくれるとは思わなかったね。あれは殺意湧いたよ本気で。帰ったらフルボッコにしようと思う……ああ話がずれたね悪いごめん。




スレで零ちゃんが書いていたように、悪霊と禍ツ神の目的はそれぞれ別。

悪霊の目的は、私達巫女の生まれ変わりを殺すこと。
禍ツ神の目的は、私たち巫女の魂を食らって、力を得ること。

そのためには、一箇所に固まって、協力されたんでは手こずるでしょ?だから分断されたんだよ。
零ちゃんの予想では、恐らく一斉には来ない、前世で死んだ順に殺して行くだろうって。私たち巫女の死んだ順だね。

なんでそう思うのかって?
禍ツ神の力が、前世で私たちが封印した時よりも磨耗していて、弱まっていたからだよ。まあ弱まったって言っても、二人だけで封印するのはキツイけど…………ん?……………あー、まあ確かに、力が弱まってたら、こんな風に私たちを別々な順番で殺すんじゃなくて、手っ取り早く全員一気に殺しちゃった方が効率いいと思うよね。

その説明には、禍ツ神について話さなきゃいけないな。

地主親子が呼び出した禍ツ神は、何百人という人間の、強い憎しみや妬み、苦しみ、そういった呪いに近い感情たちの寄り集まってできた、歪で不確かな存在。
いくつもの人間の念が混じっているからかな?その禍ツ神が作ったこの空間も、色々な構造が混ざって、歪んで、こんな風に分断されてしまっては、そうそう簡単に離れた相手のところにたどり着けそうもない。

それで、なんで私らのことを一気に片付けないのか?

まずあの死んだ地主親子。あいつらは、多分既にこの禍ツ神の一部になっているんだ。
あいつらのその傲慢な思考と強すぎる妬みの念は、禍ツ神の中に渦巻く怨念たちの中でも強い力を持っている。

そして次に、この空間は禍ツ神が作った空間で、その空間の中にうろちょろしてる幽霊たちは、禍ツ神や構成している怨念が、具現化されたものだ。

怨念の具現化には、かなりの力を消耗する。人のカタチを取って、あまつさえそれを保つんだからね。
だから、弱い怨念の残滓では、具現化すら出来ない。
そして、強い怨念は具現化出来るけど、その分力を消耗する。

ようは、一気に片を付けようとすると、そのその分力を消費するから、少しずつやろうってことだ。
一応私と零ちゃんはともかく、記憶のないあの人らを纏めて殺せるぐらいの力は残ってるはずだけど………それはまあ、あくまで念のためってところかな?












「………だいぶまずくないか。いろんな意味で。」

霧咲の話を聞いて、さいあは言った。
実際、「だいぶ」どころではなくまずいだろう。バラバラにされてしまっては、前世の記憶のない彼らを守ることすらできない。つーか関係ない(とは言えない)自分まで死ぬ可能性があるなんてたまったもんじゃない。

「そうだよ。すっごく、まずいんだ。」

そう言って、霧咲は襖を開けた。

先ほどから霧咲は、襖に手を当てて、しばらく何かを念じるようにしてから開けては、次の襖へと向かっていた。そんな作業をずっと繰り返している。

「それは、何をしてるんの?」
「空間を繋げてる。」
「…繋げてる?」
「この空間の構造、バラバラだって言ったでしょ?だから、そのバラバラなのを繋げ直してるんだよ。」

さきほどから行っていたのは、どうやらそのために必要な作業だったらしい。

「でも、それは……」

気の遠くなるような作業じゃないだろうか。

「いいんだよ。」

さいあの言葉に、霧咲は微笑んだ。

「もしも、緑の巫女…ふうなちゃんに記憶があれば、こんな空間の中だって、迷うことなく私たちと合流できただろうな。あの人は、たとえ別の空間にいようがなんだろうが、蔦を手繰って何処にでも行けるから。
でも、私にはそれは出来ない。
だから、気が遠くなろうが、やるしかないんだ。」

さいあに、当然前世の記憶はない。
だから、霧咲にとって、他の巫女が、どんな存在なのかなんて、わからない。

でも、掛け替えのない存在であることだけは、わかった。







私にも、何か力があれば。


























(やばい。)

お泊り会で次々と体調不良者が現れたと思えば、異世界に引き摺り込まれて。今、自分の目の前には、高価そうな着物を身に纏い、黒い瘴気を放つ、悪霊がいた。

零は、先ほどもなかさんを庇おうとして、悪霊の放ったナニカに吹き飛ばされ、気を失っている。
ひどい怪我をしてなきゃいいな、と思った。

ずるり、ずるり、着物を引き摺りながら、女がこちらに近づいてくる。もなかさんは気を失っているし、近くに武器になりそうなものもなく、かといって俺の戦闘能力は大変低い。
さっきまであった刀ももう自分の中に力が全然ないから使えなくなってしまった。
零ともなかさんを助けるにしても、時間稼ぎにしかならない。



ここに来てから、もなかさんはずっと「声」が聞こえていたみたいだ。
そのときは、部屋に張られた結界のおかげか、他の面々には何も聞こえていなかったらしいが、もなかさんにだけは、ずっと聞こえ続けていた。

「絶対に答えるなよ」

零はずっとそう言っていた。

そんな零は、震え続ける自分の腕を、ずっと隠していたみたいだ。怖いなら頼ってほしいと思う。今そんなこと言ってる暇ないけど。

その時もやはりその手のひらを、昔握りしめたことがあるような気がした。




女の着物の裾から、突然ぶわりと湧き出た瘴気が、長く幅の広い、大きな刀のような形になる。

ずるり、ずるり。

女はもう目の前だ。
足は、実のところさきほどエンカウントした霊から逃げる時、挫いてしまっていて、歩けそうにない。代わりに腕を使って、体を引きずるように、逃げる。

もなかさんたちから少しでも遠ざけようと、皆のいる方とは逆へ、逆へ。








けれど。

前方から、近づいてくる影。
足のないもの腕のないもの内蔵のこぼれ出したもの首のもげかけたもの、てんでバラバラな死に様の幽霊たちが、こちらに向かってゾロゾロと。

ひっ、と悲鳴をあげて、進むのをやめる。

けど、けど、すぐ後ろには、女の霊が。




振り返ると、ちょうど女が刃物を振り上げたところだった。






あ、これ死んじゃうかな、とどこか他人事のように思った。
次に来る激痛を覚悟して、調椛は目を閉じた。









「調椛!!!!」


鋭い声が耳に届くと同時、強い力で引っ張られ、体が襖に激突した。その衝撃に耐え切れず、襖が倒れる。
呻きながら目を開けて。

そこに。

目の前に。



先ほど自分のいた場所に、零が、






笑って





「零ッッ!!!」










見開いた視界の先で、赤色が舞った。




















前回次の次くらいで終わるとか言っといて終わらないかもしれない。全ては私の文才のなさが原因です申し訳ない。


今回はかおすちゃんねるパートがほとんどなく、代わりに小説パートがてんこ盛りでした。
だいぶアバウトな設定で書いてるので、矛盾とかないか心配。
も、もし気付いても見て見ぬ振りをしてください………




さて今こうなっています



調椛→零(→←)もなか

霧咲(←)さいあ

める→ふうな(→)零


意味わかんねーと思いますけどとりあえず全員百合です。



このままラストまで、スレの皆は完全に置いてけぼりで物語が進行して行きます。
もう携帯も通じませんからね……




まあちまちまこうしんしますので。
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