白の咲き乱れる世界は、悲しみだけを際立たせる。
花は一瞬の命を看取られることなく散らせ、人の命も同じで。
生者の葬列はただ虚しく、そこに故人はもう存在しない。

「自分のしたことは返ってくる。当然のことでしょ?」

きらきら。きらきら。
幻想的な楽園で。

「それが自分の罪ってか?」


誰より何より深い落園。
消えない祈りと終わらない懺悔。


「さぁ、どうだろう」


手向ける花束。
消えるはずのない幸せな日々の記憶。
彼女は少し短くなった髪を風に遊ばせ、見える紺碧の果てを探した。


「いらっしゃい」


彼女の屋敷には、瞳の色によく似た刀が飾ってある。
静かに光るそれにかつての彼女の面影はない。


彼女はずっと笑っている。
墓標に手向けた花を摘む時も海を見ていた時も。
あの時より痩せた白い腕。
後ろ姿はあの時、勇ましく戦った戦友のものではなかった。


「R、」

「……私は零、でしょふうちゃん」

「悪ぃ、つい」


ふうなは失言だと瞳を伏せた。
そうだ、彼女は零だ。
かつての戦場に全てを置いてきた、今目の前に居るのはただの平和な国に生きる少女。
自分の知っているRでは無い。


「はは、気にしてないよ。
今日聞きたいのは刀を握れる様になったかでしょ?
残念だけど……刀を握れる様になったとしても、私は二度と戦わない。まあ目ももう見えないし。」


誰の命も奪えない。
どんな色の血でも見るのは嫌だ。
命を断つ音、感触、悲鳴、縋る手、罵倒、罵声、恨みのこもったあの視線。
もうこれ以上背負えない。


「分かってる。世界は平和になった……だからお前が辛い思いをして刀を振る必要はない」


俺が聞きたいのは。
聞かなければいけないのはそんな事ではない。
思い出に奪われるその前に、どうか言って欲しい。
その笑みを解いて一度だけでも。


「零、お前……幸福か?」


生きていたいと、思ってくれている?
その隣に居るのか俺でなくても構わないから。


「もちろん」


冷たい笑み。
散らす花びら。ぬける赩。
幻想は現実にはならない。
甘い甘い砂糖菓子。何を期待しているの?


「今すぐにでも死にたいくらい幸福だよ」
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